初恋の住む星
よく晴れた日の午後だった。
マジックが空を仰ぐと、鳥が一羽、小さく鳴いて青さの向こうへと飛んで行った。
青はその色を重ね、滲ませ、ぼかし、空のかたちを染め上げている。
昨日までの雨が嘘のようだ。
こんな空の下で、あの人を送ることができたらよかったのにと、彼は思った。
昨日のような葬儀では、死者だって風邪を引いてしまう。
「忘れ物は、ない?」
もう一度サービスに聞いても返事はない。帽子を被せた頭は俯いている。
小さな右手は、先程自分が握らせたままの形で、小さな鞄を持っている。その指が強張っている。空いた左手を自分が握ると、僅かに震えた。
正面玄関車寄せの側、樫の木の下。そこに立ち尽くしている双子の兄の隣に、そうやってそっと手を引いていく。
ハーレムも、自分がそこに連れて来た時のままの姿をしていた。
両足で大地を踏みしめ、口を引き結んで、握り拳を作って、じっと前を見据えている。
珍しいね。いつもなら、きちんとした服なんてさっさと脱ぎ捨てて、跳ね回っているのにね。
人形のようになってしまったサービスを、その側の石段に座らせると、マジックはもう一度空を仰いだ。
……あの、空の向こうが、遠い水面。
青いよ。
届かない。
この家は、可愛い熱帯魚のいない、さみしい海の底みたいだ。楽しい香りはもうどこにもない。
『まあ、いいじゃないか。これからの僕らの方が、あの花よりずっと長く一緒にいられるんだから』
数日前の自分の言葉が、不意に耳を掠める。
傍らの双子を見下ろした。小さな、か弱いその姿。
ごめんね、ハーレム、サービス。僕は、嘘をついてしまったよ。
あんなに楽しみにしていた遊園地だって、行くことができなかったね。
一緒にいることが……僕ら四人の、かたちだったのに。
「……ルーザー……おにいちゃんは……」
サービスが地面を見たままで、呟いた。
「ああ」
答えている自分。
まるでスクリーンに流れる映像を見ているような僕たち。
ぎこちない。
「今、部屋から連れて来るよ。大丈夫。一緒に車に乗るから」
昨晩からこの双子は、ルーザーと顔を合わせてはいない。心配なのだろう。
「今、連れて来るから」
そう言って、マジックはその場を離れようとする。しかし繋いだままのサービスの手が、離れようとはしなかった。
「……サービス」
困って声をかけると、その口が『まいご』と言う形をした。
サービスはね、まいごなの。
そう聞こえた瞬間、すっと手の力が抜けた。二人の手が離れる。
「……」
マジックは無言で歩き出した。
踏みしめた地面が、硬かった。前庭の木立が、ざわりと鳴る。
突然、ハーレムが叫んだ。自分は振り向かなかったが、おそらく彼は立ち尽くしたままの姿でいるのだろう。
「ルーザーおにーちゃーんっ!!!」
子供の高い声。
聞こえていないよ、多分。
そう思ったが、ハーレムはそんなことはどうでもいいのだろうとも、思った。
ただ、叫びたいだけ。
何かを胸の内から、逃がしたいだけ。
「ボクはねぇー!!! ボクはねぇ!!!」
マジックは玄関口へと向かう。
「おっきくなったら、パーパみたいな軍人になるの――!!!」
繰り返される、幼い悲鳴のような叫びが背中に痛い。
「ボクはぁー!! ボクはぁーっ!! おっきくなったら……」
ハーレム。
「パーパみたいな、つよい、軍人に……」
ハーレム。
もう、なりたい、じゃないんだね。
「軍人に、なるの――っ!!!」
そうだね。なるがいいさ。
お前はあの人みたいな軍人に。きっと、お前なら、なれるさ。
邸内に入り扉を閉めた自分の耳に、最後に『あいしてる』という言葉が触れて、消えた。
部屋の扉をノックして開けると、意外にもルーザーは用意を済ませた状態でそこにいた。
青白くはあるが、椅子からいつもの綺麗な顔で、自分を見上げる弟。今朝までの様子が、嘘のようだ。
「……忘れ物は、ない?」
そう機械的に聞く自分に、『ありません』と機械的に答える彼。
促される前に、静かに立ち上がる。そのまま一緒に部屋を出た。
歩く。二人分の足音が、長い廊下にどこか冷たく響き渡る。
幼い頃から、こうして廊下を歩いていた。これから少なくともしばらくは、この足音を聞くことはない。
自分たち兄弟は、今日この家を出る。軍本部内の居住空間に、転居することになっていた。
弟たちだけをこの広い家に残すのは、不安だった。
自分がほとんど側にいてやることができないのは、どちらにしても同じではあるだろうが。
――マジックは昨晩の出来事を思い出す。
ルーザーは葬儀を終えた後、温室の白い花に火をつけた。
駆けつけた自分に、彼は燃え上がる炎を目の前にして、こう小声で漏らした。
『綺麗な内に燃えた方がいいんです』
『……そうだろうか? 本当にそうだろうか、ルーザー?』
『花は……花です。左眼でも右目でも……どちらの目で見ても、僕にとっては、ただの花でした。それだけです』
その虚ろな二つの青いガラスに映っていた炎は、どちらも等しく陰りを帯びていた――
三人の弟たちを外に待たせた後、マジックは最後の確認のために、再度、邸内に入った。
数日前と、内装は何一つ変わってはいないというのに。
そこは、がらんとした空洞のように見える。
居間。床に転がっていたボールを拾い、キャビネットの上に置くと、彼は、その隣の棚の、一冊の本を手に取る。
ずっと鞄に入れるかどうか迷っていた。
毎晩、双子に読んでやっていた『星の王子さま』。表紙の優しい色調は相変わらずだ。
結局、最後の部分まで読んではやれなかった。
自分にはもう、彼らにこの話の最後を語ってやる時間はない。
指を伸ばして本を開く。上質紙のめくれる柔らかい音。弟たちの知らない、物語の結末。
「……キラッと光が走った。王子さまは身動きもしないで……」
彼は、本の終りのページの文字を目で追い、誰にともなく呟いた。
「王子さまは、一本の木が倒れでもするかのように、しずかに倒れました」
人気のない部屋に声が響く。
「夜があけたとき、王子さまの体は、どこにも、見つからなかった……」
そして王子さまは思い出だけを残して、この世から消え去ってしまうのだ。
誰にも、その子を助けることはできない。
静かに本を閉じる。
――はかないね。はかない、最後だ。
体さえ、生きた証さえ、残らないなんて。
王子さまは、どんな思いをしたのだろう。
そして……残された人間は、どんな思いがしたことだろう……。
これから自分の代わりに双子の世話を任すことになる、ルーザーにこの本を手渡そうと思ったが、やめた。
双子は、このまま最後は知らない方がいい気がしたのに加えて、どうしてかルーザーにも、読んで欲しくはなかった。
マジックは本を棚に戻すと、そのまま後ろを振り返らずに、家を出た。
黒塗りの軍用車が門前で待機している。その脇に一列で敬礼している軍幹部。
マジックは答礼を返す。これからは彼らが自分の部下になる。
「……おうち、もう帰ってこないのぉ……?」
側に来た自分に、ハーレムが泣き腫らした目と枯れた声で、不安気に漏らす。
それを聞いて、空ろな色をしていたサービスの薄い瞳に、一瞬の生気が宿る。そしてそれでもぼんやりと、前庭の木々を見つめていた。
まるでその小さな心に、過去を焼き付けようとするかのように。
薄く風が吹いた。そっと四人の兄弟の頬に触れ、金髪に触れ、静かに通り過ぎていく。
マジックは双子の顔を見下ろした。目を伏せる。
……お前たちは……もしかしたら、すぐに忘れてしまうかもしれないね。
僕らの暮らした日々や……あの人の記憶や……全ての面影を。
だって、お前たちは、あまりにも幼いから。この日々は、あまりにも短すぎたから。
そして淡い、ぼんやりとした印象だけが、この双子の心の底に残る。甘い蜜の、残り露のように。
曖昧なそれだけを頼りに、お前たちは、これからの成長を重ねていくのかもしれない。
それで、いいよね。
願わくば、その微かな記憶がこの二人にとって、良きものであるように。
僕は、兄として……。そしてこれからは一族の長として……それを望む。
「ハーレム、サービス。いつかきっと、帰ってくるよ」
だから、こう声をかけた。二つの金色の頭に、両の手を置いて撫でる。
小さな……小さすぎる、弟たち。
しかし、自分の手だって、さして大きくはないことには気付かない振りをした。
それでも。
いつかは帰ってくるよ。
でもその頃には、僕らは、どんな顔をしていることだろう。
愛されることを初めから知らない人間と。それを知りながら、奪われる人間と。
どちらがより孤独なのだろうね。
マジックが双子を一人ずつ抱きかかえて、車の後部座席に乗せている時。
視界の隅に映る、側に立つルーザーの白い手が、震えているのがわかった。
ごとん、と音がした。
しまった、と思った時には、弟は荷物を落として駆け出している。
「ルーザー! 待ちなさい!」
軽く舌打ちをすると。不安そうな目をした双子を軍幹部に預けて、しばらく待つように伝え、マジックは後を追った。
青空は薄みを増し、落ちていく日の光を滲ませ始めている。
前庭を抜けて。弟が丹精を込めて作り上げた緑の小道を抜けて。その後姿は、やはり中庭の温室へと滑り込む。
ガラスの部屋。雨の後の淡い虹のように、現実の中で浮かび上がる空間。
マジックがその扉を開けると、ルーザーはあの白い花があった台の側に、ぽつんと一人佇んでいた。
差し込む光の、幻のように透き通る陰影の中で。一人、待っていた。
昨夜の燃え残りの花の灰を、手の平に乗せて見つめている。
「……ルーザー」
声をかけて近付くと、その澄んだ瞳が自分を見返す。その顔の輪郭が、わずかに震えていた。
そして動く。形の良い唇が、静かにふうっと粉を吹き飛ばす。一瞬で空気の中に溶けて消えた。
白い指先。静寂の後、淡々として彼は呟く。
「……生きているということは、こうして一瞬で塵になります。命ははかない。とても簡単に終わる。どうせ終わる命なら、綺麗なままで塵になりたい……父さんのように」
「ルーザー。行くよ。いつまでもここに居てはいけない」
「……嫌です。僕は行きたくない。僕は、僕一人はここに残ります」
「駄目だ。それは許さない」
強い調子で言うと、相手は顔を背ける。薄い金髪に滲む光が弾ける。
「だって、だって父さんがいません。父さんがいない世界は僕には……恐ろしい……この美しい力の構図の中で、父さんは消えて……そうだ、あのレター。あのレターを僕に下さい。あれがないと、僕は……」
「あれは昨日、棺と一緒に土に還した。お前も見ていただろう。もう何処にもないよ」
何処にもない、ということを示すために、マジックは両手を振ってみせる。
弟は一瞬真剣にこちらを見たものの、また力無く目を伏せてしまった。
二人を包む、空調機と照明を切られた温室は、ただの透明な箱だった。
立ち並ぶ、生気を失った植物たち。残される彼らは、これから枯れていく運命にある。
時々、小さく鳥の鳴く声と、庭の樹木の葉擦れの音と、夕暮れの斜光だけがこの空間を満たしていた。
外界から遮蔽された生温い空気。
ルーザーは大きく息をして、それを吸い込み吐き出した。
鈍い呼吸。そして俯いたまま、言葉を漏らす。
「……兄さん。一つだけ教えてください。父さんの残した最後の言葉。あれは命令ですか?」
「……」
「『幸せに、なるんだよ』と。それが命令であるなら僕は従いましょう。ですがその果たし方がわからない。だから今の僕は混乱している。歩くことさえままならない……」
「……お前にとって、そう理解するのが自然であるのなら、そう理解するがいいさ。だが、その命令は」
マジックは唇を噛んだ。
「その命令は少なくとも現時点では保留だ。むしろ僕が撤回してもいい」
「そんなことが兄さんには可能なのですか? 父さんの命令なのに」
「ルーザー」
マジックは、弟の肩を抱いた。そして言う。
「もう、あの人のことは忘れろ」
「もう僕は、あの人のことは想わない。だから、お前もあの人のことは忘れろ。想うな」
「兄さんは……あの人、あの人って……」
「忘れるんだ」
ルーザーは呼吸を繰り返している。その繰り返しが、死へと近付いていく道であると、かつて弟は言った。
自分は彼をその淵から引き止めたい。防ぎたい。
「これから、お前を支配する絶対者は僕だ」
戸惑って見返してくる瞳。それを見て、マジックは思う。
可哀想だ。可哀想だね、ルーザー。
もう簡単なことしか、お前はしなくてもいいよ。
もういいよ、ルーザー。苦しまなくても、いいよ。
「……お前は形式を踏まないと、納得できないよね」
馬鹿だ。お前も僕も、馬鹿だから。
いつだって理屈をつけて、無理に理屈をつけて、納得するのに時間がかかる。
ああ、馬鹿だ。
ルーザーを納得させるという作業は、いつも自分を納得させるという作業でもある。
――ここは、青い砂漠、海の底。
水面から降り注ぐ光は消え。正しい道筋は消え。
浮かび上がる術さえわからずに、僕はただ、更なる深みを目指して潜り続けるしかない。
『マジック……お前が家族を守るんだ』
『私はお前たちを愛しているよ』
『幸せに、なるんだよ』
父さん。
さようなら。
父さん。
あなたを失った今となっては。
あなたを想えば、僕はそこから崩れていく。
だから、さようなら。
さようなら、父さん。
――ここは、あなたのいない、海の底。
もう僕はあなたを想わない。
光のあなたは目指せない。
この眼が涙を流すこともない。
僕は一生、誰からも。
愛されたいとは、思わない。
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橙色の斜光と透き通る部屋の、鈍く流れる時間。
空調の切れた温室には、生温い空気と萎れた植物しかいない。
そして二人の人間。
秩序は一度壊された。だから、新しく作り直されなければならない。
そうでなければ、僕は。
僕は、と。
ルーザーは口の中で繰り返す。
目の前の彼は、自分の兄だった。そしてこれからは、一族の長として立つべき男だった。
兄とは何か? 人の長とは何か?
それは弟たちや従う者を、自分の中に受け入れる人である。
すべてを背負って進む人である。そうでなければならなかった。
ルーザー自身は、幼い双子の兄ではあったが、この彼の弟だった。
弟であると同時に、生まれた時から彼に支配されるべき存在だった。
絶対的な順序と能力差による、青の秩序の下で、壊された秩序の後に待っているものは、予定調和の世界だった。
生れ落ちた時から決められていた関係。その中に彼は組み込まれていく。
そしてそんな自分は、やはり幸福であるのだろうと考えた。
もう、新しい王を得た自分は不幸ではない。
やるべきことを定められ、何者かに必要とされているのだから。
『幸せに、なるんだよ』
ルーザーはその言葉を、こうして果たすことができるのかもしれないと考えた。
でも、兄さん。
僕はこの温室から出れば、老いてしまう。
老いて、醜くなって、いつかは壊れる。
それでもあなたは僕を守りきれるんでしょうか。
約束を守りきれるんでしょうか。
しかしそれが命令だというのなら。
僕は従いましょう。
それが、さだめであるのなら。
彼の前に、跪くように言われた。足を折り、左手を地につける。
垂れた頭に、マジックの冷たい手の感触がした。
高い位置からの厳しい声。
降り落ちてくる。
ルーザー、と名を呼ばれる。
「ハーレムはお前を悪魔のようだと言い、サービスはお前を天使のようだと言う。でも僕だけはお前の両方の顔を知っている」
与えられる言葉は続く。
「僕は、どちらでもいいよ。どちらもお前であるならば」
自分を抑え付ける手は強い。
「僕は……いや、私は総帥を継ぐ。青の一族当主の座も同時にね。お前はその生涯の間、私に従うことになる」
全ては最初から決められていたことだった。
その時がわずかばかり早まった。
それだけのことだ。
そう感じた瞬間、ルーザーの目の前が一面の青に染まる。
熱い。
冷たい。
暗い。
粘る水。
僕は。
……僕は、こんなにも、弱い……。
何かに頼らなければ、青として、生きていくことなどできはしないのだ。
――ここは、あなたと僕の、海の底。
サービスの美しさが、泥に塗れるのを、見たくはない。
ハーレムの悪戯なわがままさが、飼い慣らされていくのを、見たくはない。
守りたい。
昨晩の燃え上がる炎。花の最後。
青の眼でも人の目でも、その最後は、はかなくて。
せめて。せめて、弟たちは――
兄の言葉が響いている。
「……青は、私の、さだめの色。私はそのさだめを、自分のやり方で支配してみせる。もう何かをなぞりはしない。私が逆になぞられる唯一の存在になるのだからね」
「一族の長として、お前に最初の命を下す」
「はい」
……もう彼は、『約束』という言葉を使わない。
さだめ。命令。従える。支配。
しかしルーザーにとっては、一番わかりやすい言葉。
兄は自分に対して、何かをあきらめたのだと感じた。
もう彼にはそんな暇や余裕はないのだ。青として生きる道。
その先にある――覇王への道。
しかし、彼なら。マジックなら、それを完璧にやり遂げるのだろうと、ルーザーは信じた。
だから、それで良かった。
その後に、上手く付いていくことができるかだけが、これからの自分の最大の関心事になるのだろう。
僕たちは、一人じゃないって。
一人じゃないって、あなたはあの夜、仰いましたが。
でも強いということは、全てを従えて最後は一人残るということですよ。
御存知ですよね。
僕は、あなたが、最後に残れば、いい。
ルーザーは頭上の手に、また力が込められるのを感じた。
抑え付けられ、命令を待つ自分はただ呼吸をする。
繰り返す。もう息は止めない。
限られた時間を、これから自分はこうして刻んでいく。
金髪が頬にかかり、ルーザーの睫毛をかすめた。
それは兄のものだった。
抱き締められて、自分は小さく目を瞑り、また開いた。
涙が一粒、弾けて零れ落ちていく。
燃えたはずの甘い花香が、消えたはずの食卓の香りが、何故か、した。
「生き残れ。私と共に、生き残れ、ルーザー!」
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あの日、僕らは大切なものを失ったね?
ひとたび星から堕ちれば、もう青い砂漠から見上げるしかないのさ。
花よ。
夜に輝く光の星に住む花よ。
君は美しく、悪戯でわがままに、僕を従え支配する。
生れ落ちた時から決められていた、運命の瞬間。
君を失う時も、また一瞬。
この想いを愛と呼ぶのなら。
君は僕の、最初で最後の恋の輝き。
さようなら、初恋。
僕の花。
星が美しいのは、君がいたから。
星が輝いていたのは、太陽の光に照らされていたから。
そう、僕は、あの甘い幸せの日々を。
星の中で君と暮らした。
二度とは戻れない。
いつか崩れ落ちるその時まで、僕は君を恋した思い出に、生き続けるのだろう。
最後の審判が僕を裁くまで。
君の短い命に、僕の全てを捧げよう。
命は、はかない。
はかないから、共には残れない。
二度とは戻れないから。
僕は、君に恋をした。
海の底から面影を追う。
四枚の花びら。
僕たちの香り。
愛された記憶。
光の世界。
少年期の終り。
終