真夜中の恋人

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 実を言うと、シンタローのその中心は、先刻から。
 優しくされると興奮して、だけども口論の最中は、何だか手持ち無沙汰に萎えたりしていて、忙しかった。
 確かに気持ちいいと、もう止まらない! 一直線! というのが男の性であるはずなのだが、反面、精神的にうんざりしたり、しょんぼりしたりすると、すうっと下を向いてしまうのもまた、男の性。
 一直線が、かくんと慣性の法則に反するように、斜めにずれてしまう。デリケートにできている。
 またマジックは、シンタローを気持ちよくさせるのも上手い代わりに、萎えさせるのも意図してか意図せずしてか、嗚呼、哀しいかな、上手いのであった。
 肝心な時にハズしたり。気持ちが盛り上がった時に、おかしなことを言ったり。付き合うこっちの身にもなって欲しいものである。
 やれやれだ。
 そして今。シンタローのその場所は、穏やかでない状況に晒されている。



 ――視線を感じる。
 マジックは、シンタローの両足を広げてしまって、下からじっとその場所を眺めているらしかった。
 両の太股が、彼の両手に掴まれている。
「……う」
 居心地の悪さと羞恥を感じて、もぞもぞと腰を動かすシンタローである。
 すると、相手の声がする。
「お前の、ここ……」
 ここ、とは。そこ、のことなのだろう。
 自分が裸なのは今さらだったが、改めてシンタローはそれを思い知らされて、とても精神衛生上、具合が悪い。
 こんな、あられもない姿を見られているだけでも、嫌なのに。
 マジックは。マジックの奴ったら。
「犬のシッポみたいだよね」
「なんだとぉ?」
 男の象徴である部分に、はなはだしく失礼なコメントをされて、シンタローは憤慨した。こんなこと言われて怒らないようでは、オトコじゃない。
「見るなよッ!」
 シンタローは体をずらそうとしたが、押さえ込まれてしまってダメだった。相手は下にいるのに、相変わらずがっしりホールドされてしまっている。
 マジックは楽しげに続けた。
「嬉しいと、元気よく振るんだよね。で、悲しい時は、なんだか、しゅんとしてる。わがままな猫かと思えば、シッポは犬みたい」
「勝手なこと言うな――!」
「さっきから辛かった? だよねえ、放置されてるみたいで、辛かったよねえ」



 図星だけに、シンタローは声を荒げる。誰のせいだと思ってるんだ。
「辛くなんかあるか! ぐぅ、このハレンチ親父! まさか、ずっと見てたのかよ!」
「当たり前だろう。私が見ない訳ない。いつだってお前のすべてを見たいんだから。そりゃ見るよ。全身くまなく見るに決まってる」
「……っ、『見てない』とか言ったクセに! ズボン脱ぐ時!」
「あれ、そんなこと言ったっけ」
 ぐ、とシンタローは声を詰まらせた。
 ダメだ、この男。自分の都合のいいことばっかり。これだから。これだから、マジックって!
 ……と、シンタローはまた悪態をつこうとして、これではまた口論の繰り返しだと気付く。
 今は。今、この非常事態を、打破する方が先で。でもどうしよう。
 とりあえず、シンタローはこう怒ってみた。
「チッ。とにかーく! 見ンなって!」
「ヤだよ。どうして? ほら、こっちは素直だよ、見られて喜んでるじゃない」
「違う! 違う違う違う――ッ!」
「お前のシッポ、私は何にも触ってないのに、また、ぴくぴくって上を向いて……って、この場合は下か」
「違――――うッッ!!!」
 違うと言いつつも、何だかマジックの視線を感じていると。
 シンタローは、再び熱が、じんじんと一箇所に集まり始めているのを自覚している。
 羞恥と興奮が、何故か正比例しているのを、シンタローは認めたくなくって、四つんばいになったまま、いやいやと首を振る。



 マジックの方は、気楽なものである。この男には恥も外聞もないのかと、いまさらの絶望をシンタローが胸に抱いていると。
 さらに、こんなことを聞かれてしまう。
「ねえ、ケンカしてる間……私のも、見てた?」
「見るかよっ! あ、アンタのなんて、俺が見る訳ねぇだろっ!」
 妙に焦ってシンタローは答えたが、これは本当のことだった。
 先刻の言い争いの最中も、ずっと目を逸らしていた。
 今だって。視線を落とせば、すぐ側に、相手のそれが、あるのだけれど。
 必死に目を逸らしている。
 シンタローはいつになっても、相手のそれを直視することができない。
 これもまた、なんだか、恥ずかしい。この男との間のことは、シンタローにとっては、恥ずかしいこと尽くめである。
 逸らしていたって、これだけ長い間一緒にいれば嫌でも目に入るから、見慣れてはいるのだけれど。
 強制的に見せられることだってあるのだし。でも自分から見るなんて、シンタローの信条に反しているのだ。
 てらいもなく、男のその部分を、まじまじと見ることができたのは、せいぜい子供時代に、マジックと一緒にお風呂に入っていた時ぐらいのものだった。
「俺は見てない! アンタのなんか、見てないッ!」
 意地になって叫ぶシンタローに。
「さっきは、あんなに大胆なコトしといて。見てない、だって」
 そう言って、マジックは。
「はは、今度は震えてる」
 笑って、言った後。シンタローの内股のやわい部分を、そっとなぞってから。
「かーわいい」
 ちゅ、とシンタローの中心――性器の先端に、口付けた。
「……ッ! はうっ……」
 ビクンと腰を浮かして、シンタローは腕と脚を、突っ張らせた。



 鋭敏な先端が、ちろ、ちろ、と赤い舌先で、なぶられていく。
「いっ、あ、あっ……!」
 まるで濡れた羽毛の先で、弄くられているような感覚に、シンタローの息があがる。
 マジックの舌は、執拗にシンタローの性器の先、鈴口の辺りばかりを刺激しているのだ。
 尖らせた舌に、ツンツン焦らすように突付かれれば、背を反らして喘がずにはいられない。
「あ、あ、うっ……」
 マジックが、『このローション、無添加・無着色・植物性です、お口に入っても大丈夫! とか書いてあるね。よかった、よかった』なんて勝手なことを、器用にも愛撫の狭間に呟いているのも、聞いてる暇なんてないのである。
 どうやら、お徳用、だったらしいジェルローションは、いまだたっぷりとシンタローの肌を濡らしている。
 その透明な膜は、浴室の薄明かりに、艶めいて光を帯びた。



「んっ、んんっ」
 すぐに我慢できなくなって、シンタローは腰を揺らしてしまう。
 意識しないのに、相手に『もっと』とその部分を押し付けるような格好になってしまう。
 身体が高ぶるのは、簡単だ。
 ましてや一度燃えた体。ましてや、ずっと欲しかった人からの愛撫。あっという間に、火照りだす。
「参ったな、あんまり動かないで……」
 すると、くすりと笑われる気配がして、強く下から腰を掴まれて。掴んだ長い指が、脚の付け根の内側を、さわさわと撫でるから。
 シンタローは、濡れた黒髪を揺らして、熱い息を吐きながら背筋を震わせる。甘い痺れが、体の芯を、電流のように突き抜けていく。



「……っ?」
 急に、全神経を集中させていた部分から、濡れた感触が消えたかと思うと、マジックの指の腹が、シンタローの性器のかたちを、根元から、ゆっくりとなぞっていって、
「ほら。シンちゃん。わんわん。シッポ、上手に振ってごらんよ」
「あっ! や、やめ……っ」
 そんな風に、いたずらされてしまう。
 これならまだ、猫の方がいい。気ままに尻尾を振る、猫の方が、いい。
 いやそれより、俺は虎なんだ、誰よりも強い虎なんだ。やめろ、とシンタローが文句を言おうとした舌が、口の中で硬直して、唇の隙間からは喘ぎばかりが漏れてしまう。
「んっ、あ、あ……」
 胸が上下し、鍛えられた腹筋がひくりと反応してしまう。
 すうっと指で性器の裏筋を撫で上げられてしまえば、もう言葉なんて、上手く出てきたりなんてしないのだ。
 聞こえるのは、マジックの声ばかり。
「いい眺めだなあ。ほら、もっと振って。四つんばいでシッポ振るのって、本当に犬になったみたいで、気持ちいいでしょう」
「んっ、ば、ばか……や、やめっ! んんっ、あ」
「あれあれ、早いな、もうシッポ、泣いちゃったかな」
「――ン……」
 根元から上がってきた指が、透明な涙を零し始めた鈴口を、再びぐいっと刺激したから。床に置いて、突っ張らせていた両の腕の力が、がくりと抜けて、
「ンッ!」
 マジックの上に、上半身を突っ伏してしまったシンタローは、自分の体重ですでに尖りきった胸の乳首を押し潰す結果になってしまい、またビクンと胸を震わせたのだ。



「ば、ばか……や……ろっ……」
 一気に達するにはまだ足りない、ゆるゆるともどかしいばかりの刺激ばかりが与えられて、体内には熱が篭っていく。
 まだ、イケない。イケない程度の焦らす愛撫ばかり、しやがって。
「……て、てめー」
 突っ伏していた顔を、ようやっと上げてシンタローは、精一杯に首を回し振り返って、相手の顔を睨んでやろうとしたのだが。
 まさにその相手の余裕たっぷりの顔の側に、自分の下半身にそそり立った『シッポ』が鎮座しているのが、視界にモロに入ってしまって。
 うわあと黒髪を散らせて、慌てて正面を向いて。
 今度は、もっと凄い、それこそ『鎮座』という言葉が似合うマジックのモノに、ほっぺたを自らピタリとくっつけてしまったから。
「ぎゃあ!」
 およそ色気のない声を、出してしまった。



「『ぎゃあ』って何だい、失礼な」
 とは、マジックの苦情である。
 でも。だって。だって、とシンタローは、今度は心の中で叫んだ。
 だって――!!!
 叫んだって仕方ないモノがっ! お、俺の顔にッ!!! 俺の顔の下から、生えてるッ!
 折角見ないようにしていたのに、一度意識してしまえば、もう終わりであった。
「ヘ、ヘンなモンつけんな! ンなの、だっ、誰だって『ぎゃあ』って言うわい!」
 そう言って、シンタローは、ソレ、から顔を背けたのだけれど、
「ふーん、そんなコト、言うんだ」
 意地の悪い声が、自分の体の下から、聞こえてくる。
「さっきは、お前、あんなことしてくれたのにねえ……腿で挟んで……」
「ウッギャ――! 俺はンなコトした覚えはねえ――!!!」
 条件反射的なシンタローの答えに、マジックは、ふう、と溜息をついた。
 裸で二人がこんな変態的な体勢になっていることなんて、まるで意に介さないという風の、無駄に優雅な溜息である。



 しみじみと呟いている。
「……シンちゃんてさ、上手くノセて興奮させると、結構なーんでもしてくれるのに、最初が難しいよね。とっかかりが。なんていうか、プライドを納得させたり、忘れさせる時間が必要っていうか……怖がりの子を、ジェットコースターに乗せるのと同じで。最初に必ず一悶着あって暴れるけど、でも乗せたら、意外とノリノリ〜みたいな。でも降りたら、文句一杯! みたいな」
「なっ! ノセッ! なーんでもだとぉ! ぐっ! がぁっ! ジェット!」
 ものすごーく心外なことを続けざまに言われて、シンタローは泡を食って、これこそ反論しなきゃ俺はオトコじゃない、なんてまたまた考えて、突っ伏しながらも大声を張り上げようとした瞬間。
「あんっ!」
 力を入れたまさにその時に、再び、ちゅ、と高ぶった中心の先端に、キスをされてしまって、非常にオトコらしくない声が、漏れてしまったのである。



「ひゃ、あぅ……んっ!」
 ちゅ、ちゅ、と啄ばむように吸い付かれて、シンタローの腰はその度に動いてしまう。
 すでに降参してしまって、かろうじて肘だけで上半身を支えている腕とは違い、これだけはとしっかり踏ん張っていた両脚も、じわじわと開いていって、マジックの口にまたもや『もっと』と、性器を差し出す格好になってしまうのだ。
 嫌だ。嫌だし、恥ずかしい。
 でも、こんなに軽く口付けられているだけなのに、まるで魔法にかかったように、シンタローの全身から力が抜けていく。
「あっ、あ――」
 情けない声が出る。自分の身体は、こうなればどうしようもない。
 マジックは、きちんと口に含んではくれない。
 意地悪い唇は、頃合を見計らって、ひくひく震える内股へと移動したり、力の抜けかけている膝裏を舐めたりして、シンタローを完全には高ぶらせてはくれない。
 わざと。マジックの奴、わざと、こんな焦らし方をする。
 シンタローには勿論それがわかるから、尚更それが悔しいのだった。
「……ッ、く……」
 マジックはシンタローの体のすべてを知り尽くしている。どこをどうすれば感じるのか。何をして欲しいのか。すべて肌の欲求を知って、その上で反応を試している。
 そのすべてがわかるから。
 ――悔しい。
 そして勿論自分は、マジックが要求していることも知っている。



「シンタロー」
 ついに声がかかって、その瞬間に身構えていたシンタローは、ぎゅっと目をつむった。
「いっぱいシッポ、振ったね」
「……」
 どうして。そんな恥ずかしいことばかり、この男は言う。
「……お前のご主人様が私なら、私のご主人様は、お前だよね」
 そう言うとマジックは、シンタローの下で、身動きした。
 すると固くて熱い相手のそれが、再度シンタローの頬に触れる。見えなくても馴染んだかたちのそれが、動く。
「やっ」
 口ではそう言ったものの、今度のシンタローは顔を背けはしなかった。
 ただ目をつむったまま、黒い睫を震わせている。
「ほら、シンタロー」
 今度は下半身に、感じる刺激。
 シンタローの内股に置かれていたマジックの指が、滑り込むようにその奥へと這っていった。
 そして初めて、薄赤く色づいた入り口を、静かに撫でた。最奥の、その場所。
 ぞくり、として。身体を貫く予感に、シンタローは、身を捩らせた。
「あっ、あふ……」
「私のもね、そろそろご主人様の中にね、入りたくってたまらないらしいよ」
 指の腹は、円を描くように、その閉ざされた部分に優しく触れた。触れながらマジックは、囁くように言った。
「お前の中に入り込んだらね、存分に内から可愛がってあげるって、振ってあげるって、そう言ってる」
「……う……」
「だから、お前ね。私のも、舐めて。舐めて、ここに入れさせて」



 かあっとシンタローの頭の芯が熱くなって、思考がぐるぐると巡って、もう何もかもがよくわからなくなってしまうのだ。
 マジックの低音を聞いていると、泣きそうなくらいの羞恥心と、淫らな興奮と、訳のわからない膨大な感情が押し寄せてきて、シンタローはいつも全てをかなぐり捨てたいような気持ちになってしまう。
 総帥である普段は、ちゃんとしなきゃ、全てを背負って立たなければ、自分が団員の見本とならねばならないのだと、そう気負っている自分が、どこかへと行ってしまって。
 他の誰にも見せることのできない、淫乱な生き物へと変えられてしまうのだと、悲しくなる。
 その反面――楽になる。



 シンタローは、渦巻く心の隅っこで、ぽつんと考えた。
 でも今日は、理由があるのだった。
 ――こんなに俺が。
 こんなに俺が大人しくマジックに従ってしまうのは、酒のせいだ。
 酔ってるから。やっぱ、酔ってるから、俺。
 自分が酔っていると思えば、本当にそんな気がしてくるから不思議だ。
 広いからそこまでの蒸した空気は感じないものの、ここは浴室。酔いは深まることはあっても、すぐに醒めることはないはずだと、シンタローは自分に言い聞かせる。
 飲みすぎちゃったから。飲みすぎちゃったから、俺。
 酔っ払いだから。
 さっきだって、ヘンなコト、いっぱい、しちまった。
 だから今だって。これぐらい、何でもねえ。
 酔ってるから、こんなことしたって、平気なんだ。



「……ん……」
「どうぞ。シンちゃん、舐めて……」
 甘く蜜を含んだ声に、導かれるように。
「……んむっ」
 マジックのそれを、自分でも驚くくらいの素直さで、シンタローは、口にくわえた。



「ん――」
 しかし口を一杯にして、シンタローは困ったような声を出した。
 くわえてしまってから、口内や舌や喉がびっくりして、侵入者に慌てふためいているような気がする。
 すぐに息が苦しくなって、シンタローは鼻を、すんすんいわせて、呼吸をする。くわえたはいいものの、どうするかまでは、彼は全く考えてはいなかった。
「んっ、ん――、む――っ」
 あれ、どうするんだっけ。
 しかもくわえただけで、相手のそれがぐんと質量を増したように思えて、ますます窮地に陥るシンタローなのである。
 どうしよう、どうしよう。圧迫感で、自由に舌も動かすことができなくて、シンタローが、うんうん唸っていると、
「もう、シンちゃんはいつもいつも……仕方がないなあ」
 下半身の方から、呆れたようなマジックの声が聞こえる。
 何を言ってやがる、俺は悪くねェ、アンタのせいだ、とシンタローが反論したくてもできずにいるところに、
「ほら、こうするんだよ」
 と、再び声が響いて、次の瞬間、とろけるような甘い感覚が、シンタローの中心を包んだ。
「ン――っ!」
 自分のそれも、また相手の口内に含まれたのだと知る。やわらかくて濡れた糖蜜を塗りたくられるような甘露。
 シンタローの腰はビクビクと反応して、マジックのそれを口一杯にほおばった唇からは、飲み込みきれない唾液が、つうっと漏れる。
「んんんっ! んむっ! ん、ん、ン――っ……」
「こうやってね、舌を動かしてごらん」
 こうやって、と言われても、とてもできるものではない。
 体の下から、自分の性器を愛撫しているマジックの舌は、ひどく巧みで、もうシンタローにはただ舐められているという感覚しかなくって、何をどうされているかなんてわかるはずがない。
「んんっ! んぅ――っ!」
 背筋をわななかせるシンタローの頭の中は、もう与えられている愛撫ばかりで埋め尽くされてしまう。



「参ったね、お前には」
「ン? ム……ッ!」
 急に愛撫を止められて、思わずシンタローは不満げな声を漏らしてしまう。
 しかし、口を離したマジックの方は、もっと不満な様子だった。
「お前ね、自分だけ気持ちよくなっちゃって。でも、こうしたら怒るんだろうし……歯が当たらないようにしてね」
「ム?」
 ググッと強引な動きだった。
 これも急に。シンタローの口の中の熱量が、下から突き上げられて。
「ン! ンッ! んうっ!」
 シンタローは、苦しくて、くぐもった声をあげた。マジックが自ら腰を使ったのだ。彼を上からくわえ込んでいるシンタローの喉奥が、ぐいぐいと押されて、頬の内側に擦られて、ただでさえきつい口内がもう耐えられなくって、目尻からは生理的な涙が零れ落ちる。
 怒るんだろうし、と言われた通りにシンタロー腹を立てて、床を両手でばんばんと叩く。抗議する。
「やっぱりね。怒るよね」
「ム、むぅ――っ! ん、はふっ」
 マジックが動きを止めたので、やっとシンタローは口を離すことができて、壮絶な圧迫感から自由になって、怒鳴ろうとしたけど声が掠れて、結局は弱弱しい声で、それでもやっと文句を言った。
「……ッ、ば、ばか……や、ろ……」
 俺が怒ると思うのなら、無理矢理はするな。乱暴はやめろ。と、続けたかったのだが、言葉にならない。
 シンタローがまくし立てないのをいいことに、マジックは代替案を考えたようだ。
「それじゃね、シンちゃん。くわえなくっていいから。舌、出してごらん」



 ――舌。
 シンタローが、考えるより先に、下半身にまた甘い痺れが走った。
「ああっ! ん、やっ!」
「こうして、ね……根元の方から、ゆっくりと……そっとね、舐めてごらんよ……」
「ん……んん……」
「ほら、どうしたの。いい子だね、シンタロー」
「ん……」
 ぞろりとマジックが自分の性器を舐め上げる感触に、脳髄までが溶けそうに痺れていく。
 全身が性感に支配されていく、眩暈がするような幻惑。
 シンタローは自然に自分の赤い舌が、唇の間から差し出されて、相手のそそり立つものに伸びていくのを、止めることができない。
 おそるおそるとシンタローの舌が、相手のその根元に触れた。
「そう、舌を平らにして……」
「んぅ」
 言われた通りに、シンタローは、ゆっくりゆっくり、そっとそっと、その巨大なそれを、舐め上げていく。先端までに辿り着くと、今度はすうっと同じように来た道を往復する。
 子供のような仕草で、シンタローはマジックの中心を愛撫した。
 マジックが満足そうにシンタローの内腿を撫でて、次の指令を出す。
「ゆっくり、そっとした後は……早くて強く。こうやって」
「ンッ! はんっ……あぅんっ」
「ほら、可愛い声あげてるだけじゃなくって。お前もやってごらん。私と一緒にね」
「ん……ん……」



 同時に同じように与えられる刺激に、意識を陶然とさせながらも、シンタローは頑張って、相手のカリ部分に舌先を這わせ、ちろちろと早く動かした。
 動かしてから、強めに吸い付く。すると相手のソレが、ますます勢いを増すのがわかって、少し嬉しくなった。
 俺の舌で、マジックの奴が、感じてる。俺が気持ちいいみたいに、マジックの奴も……。
 シンタローが、そんな達成感に浸ったのも束の間、
「そう……そうしたらね、今度は苦しくないように、先だけくわえて。その時、こういう風に、舌で先っぽを押し潰すみたいに……」
「あ、あああッ――」
「おっと、危ない、危ない」
 その刺激に、達しそうになってしまったシンタローに、慌ててマジックはその性器から口を離す。そして指で根元を押さえて、放出を止めた。
「やっ! なっ……! 手、やだっ、は、放して……あっ、ああっ」
 涙目で身をよじり、顔を後ろに向けて訴えるシンタローに、マジックは首を振った。容赦なく言う。
「だーめ。ちゃんと上手に食べさせあいっこできるまで、一人だけ気持ちよくなっちゃうのは、なしだよ、坊や」



「う……」
「ほら、早く。私がやったように、くわえてごらんよ」
「うう……」
「いい子だから。ね?」
「んっ」
 シンタローの下半身は甘く痺れて、じゅくじゅくと熱が内で疼いている。突き上げる衝動。放出したくってたまらない。出したくってたまらない。
 でも――
 マジックは、無情にもシンタローの性器の根元を押さえたまま、自らの肩を少し起こして、シンタローの腰骨のあたりをそっと舐めた。
「……ッ!」
 濡れた生温かい男の舌が、鍛えられた腹筋のすじを、愛しげに辿っていく。
 そしてシンタローの小さな臍の溝に、チュッと口付けた。
「ひゃっ!」
「お前って、こんなところも感じるんだよね。可愛いね」
 言葉を紡ぎながらも、マジックは尖らせた舌で、ちろちろと愛撫を繰り返す。
「あっ、やっ! か、感じてなん……か、ねぇ……! ンな、トコ、舐めンな……ぁ!」
 感じてなんかない、と口にしながらも、シンタローの体は揺れる。眉根が強く寄せられる。
「だってね、ココを」
 ココ、と言いつつ、マジックはシンタローの性器をいまだ握る手に、きゅっと力を入れる。
「ああっ!」
「ココは、ちょっといじくっただけで、お前はすぐにイッちゃうだろう? だから他のとこを可愛がってるのさ。シンちゃんが、早くパパのをくわえてくれないから、仕方なく」



「ぐ……」
 さっきは、舐めるだけで、くわえなくていいって、言ったのに。
 こんな凶暴なモノをマトモにくわえたら、また口一杯で、苦しくなるのに。それにコイツは苦しくないように先っぽだけって言うけど、絶対に奥まで入れるくせに。
 躊躇するシンタローに決断を迫るように、臍から離れた男の舌が、つうっと下へと降りていく。
「ほら、どうしたの」
「や、あ……あっ!」
 ねっとりと内腿を舐め上げられて、脚を引きつらせるシンタローである。
 もうどうしようもなかった。再び、シンタローは、マジックの屹立するものを、くわえてしまうのである。
 含めば、それはやはり口のサイズにきちきちで、もうそれだけで横暴な侵入者に犯されているのだという気持ちになってくる。
「ん、ん……」
 鼻にかかった声を出すシンタローに、マジックからの指示が、与えられる。もうそれに従うしか、下半身を熱くしたシンタローには選ぶ道がないのであった。
「そう。上からくわえてね、唇で締め付けて……上下に出し入れしてごらん……」
「ん……んぅ――」
「舌を平たくしたり、すぼめたりして使うんだよ。時々、吸って」
「んぅ」
「……ッ……上手じゃないか。吸う時は……ん、そうだよ。頬の内側に擦るみたいにして……」
「んっ、んぅ、ん」
「手がお留守だよ。ちゃんと指をそろえて、そう、お口でくわえながらね、下の方は手で擦ってごらん……」
「んっ、んっ、ん、ん」
「そう、いい子だ、シンタロー……」



 ――最初は嫌がってはみるものの。
 相手の熱いソレを、口一杯にほおばって愛撫していれば、どんどんとシンタローは一生懸命になっていくのであった。
 先刻、マジックが『ジェットコースターを怖がる子供』に彼を例えたように、はじめてしまえば、シンタローはいつも夢中になる。何がなんだかわからなくなって、突き進んでしまう。
 コレは、マジックのだ。そう思えば。
 口の中の熱塊が、愛しくなってくる。
 身体だけではなく、心から生まれた熱が、シンタローの全身を浸していくのだ。
 下半身でも、マジックが様子を見ながら、決定的な刺激を与えないようにではあったけれども、シンタローへの愛撫を再開している。
 火照る。
 もう意識がぽやっとしてきて、快楽は更に蜜のように濃くなり、とろけていくようだった。
 シンタローの舌も唇も、まるで溶けたみたいにやわらかく、マジックのそれに吸い付いて。
 相手のその中心が、もう自分の一部にでもなってしまったかのように、感じていた。
「んぅ――ん、ん、ん……っ」
 不意に、口内からソレが、消えた。
「ん……?」
 シンタローの口から、マジックのモノが引き抜かれたのだ。
 たった今まで情熱的に慈しんでいたものが消えてしまって、シンタローは寂しくなって、肩で息をしながら、マジックの方をわずかに振り向く。
 すると、黒髪をなでられた。囁かれる。
「上手だったよ」
「……ん」
 優しくされて、シンタローは思わず頷く。身を起こした相手が、目元にキスを落としてきたから、目をつむって受ける。耳朶を、噛まれた。
 耳元に響く声。
「上の口はもう十分だ。次は……下のお口で、食べてね」



 たった今まで、根元を押さえられて放出を止められていたシンタローのソレは、高々と天井を向いて、痛いぐらいに張り詰めている。
「……」
 はっ、はっ、と息を上げながら、シンタローは目の前の男を、ぼんやりとした瞳で見上げた。全身が気だるい熱に包まれている。
「さあ、シンちゃん」
 呼ばれて、『ん』と返事はするシンタローだったが、視点が定まらない。
 それでも、マジックが何かを手にしているようだということが、うっすらとわかった。
 ……チューブだ。
 男は、傍らに転がっていたローションのチューブを手にしている。
 言われた。
「両手を出して」
「……ん」
 導かれるように、シンタローが差し出した手に、とぷんと冷たい液体が迸った。
 手の平を満たす、ジェルローション。溢れ、檜の床へと滴り落ちていく。
 それに気を取られていたので、マジックが自分に向かって手を伸ばしてきたことに、気付くのが遅れた。
 男の手が、シンタローの両膝の辺りを掴み、ぐいっと大きく割り広げてしまう。
「ッ!」
「足、開いてね」
 反射的に、イヤだ、と思った。
 いくら今まで、互いにその場所を舐め合っていたのだとしても、大人しく言うことを聞いてしまうのが恥ずかしい。
「ぐ――っ」
 抵抗して、両脚に力を入れるも、熱に溶かされたシンタローの力が、相手にかなう訳がない。
 やすやすと広げられた自分の脚、そして……淡い明かりの下で、さらけ出されたその場所に、シンタローは死ぬほどの恥ずかしさを感じた。
 どうしよう、どうしよう、と考える間に、その上。
「ひゃ……っ!」
 マジックの持つチューブから、つうっと今度は細く液体が滴って、シンタローの脚の狭間にあるその場所に、垂らされていく。
 冷たい。とろりと粘る液。
 高ぶりきった性器が、自分ではなくその場所への襲撃に、驚いたように揺れている。透明な液に濡らされていくのは、その奥の場所。
「これでこのローションは最後だよ。無駄なく使えて経済的だったね」
「んぁっ!」
 シンタローの薄く色づいた最奥は、ひくひくと震えて、粘膜の入り口が怯えるように閉じる。



 羞恥に震えているシンタローに向かって、しかもマジックは、こんなことを聞いてくるのだ。
「シンちゃん、一人でする時は、ここは弄ったりしないの」
 カッ! と頭に血が昇って、シンタローは怒鳴った。
「するかぁ――! 絶対しねえ!」
「指を入れて、出し入れして擦ったりはしないの?」
「しねえ! するはずねーだろッ!」
「自分でする時は、前だけ? 後ろは、本当に触らないの?」
 冷たいローションで潤された後孔が、逆に熱を持っているような気がして、シンタローは頭を振った。
 振って、どうにかなるものではないのだけれど。



 こんな所に自分の指なんか入れても、気持ちいい訳がない。
 シンタローは肩で息をつきながらも、そう声を荒げて怒ったのだが、マジックはどうにも信じられないといった様子だ。首をかしげている。
「ふうん、そうは思えないけどなあ。だってシンちゃん、その可愛い場所をパパが舐めてあげたり、指で感じるトコ弄ってあげたりさあ……何より、これ」
 これ、と言いながら、マジックは自身の中心を目で示した。
 たった今まで、シンタローが口で愛撫していたもの。
 その巨大なモノから、シンタローは、目を逸らす。黒髪が揺れる。
「これ、食べさせてあげたら……」
 ぴくん、とシンタローの体が、その言葉に震えた。目を逸らしたままでも、反応してしまう。
「すぐに気持ちよくなっちゃうじゃない。もっと、もっとって、奥までくわえこんで、なかなか放そうとはしないよね。だから、」
 不意にマジックが、掴んでいたままだった膝裏から手を滑らせて、シンタローの両の太股を押さえつけ、くっと再度大きく割った。
「今日は、自分で食べる準備、してみようか」
「……ッ、く」
「ああ、怯えて閉じちゃってるね。シンタロー、自分で、狭くなったココ、ほぐしてごらんよ」
 再び抵抗しようとシンタローは脚に力を入れたが、力を入れた瞬間にイキそうになってしまって、へなへなと力を抜かざるを得ない。
 かわりに、弱弱しい声で言う。
「や、イヤだ……」
「折角、脚を広げて、やりやすいようにしてあげたのに。さあ、始めてごらん」
「ヤ、ヤだって……」
「嫌なはずないだろう、お前は。それに、ほぐさないと痛いよ。さっき私が指を入れた時、最初は痛かっただろう。しばらくしていなかったから、狭くなってるんだよ」
「う……」
「自分で、ちゃんと柔らかくしてごらんよ」
「んッ」



 シンタローは、思う。
 本当に、自分でこんな所を触っても、気持ちよくなったりなんか、しないのに。
 マジックは、こういうところが、わかってない。
 バカだ。バカヤロー。このアホ。勘違いのオタンコナスが。派手派手カッコつけ野郎が。肝心なところで鈍感。
 気持ちよくなるっていうのは。いうのは。
 ……アンタの……だから、なのに……。
 ――マジックは、こういうところが、わかってない。
「そう、長い人差し指と、中指がいいよ」
 怯えるように自分の秘所に指を伸ばしたシンタローに、マジックが注文をつける。
「……」
 シンタローは、眉根を寄せた。そして、その場所に……触れる。
「っ!」
 ジェルでぬるりとした指の腹の感触に、少し泣きそうになる。やだ。どうして俺が、こんなこと。
「そう、そのまま、指に力を入れて……」
「んっ」
「ゆっくり、ゆっくりとね。めりこませていくんだ」
 つぷ、と粘膜の中に、指先が包まれる感触。
 イヤだ。ヤだ……俺、俺……。
 自分の濡れた指が。自分の中に、埋まっていく――



「――……ッ!」
 ぬる、と指が滑って、中指の、最初の関節までが、その奥に埋まって。
 俺の中に。俺の指が。そう感じて、居たたまれなくなる。
 その感触がイヤでたまらなくなって、シンタローは訴える。
「き、気持ち悪……」
「気持ち悪い? そんなことないだろう。すぐに気持ちよくなるよ。それじゃ、」
 くっと唇を噛んで、シンタローは目尻に涙を滲ませる。
 まだ許してもらえないのだろうか。
「中指は入れたままで、人差し指を、縁にひっかけて」
 マジックは、言うのだ。
「可愛いそこを広げて、中を私に見せてごらん」
 シンタロー自身の指で、そこを広げて、自分に見せろ、と要求してくる。小さな入り口、ローションで濡れている場所。
「なっ……!」
「できるだろう。できるはずだよね、シンタロー」
「できな……ッ!」
「いや、できるよ。見ててあげるから。さあ、やってごらん……」
 マジックの声には、人を惑わす色がある。
 これが素面だったら、フツウの時だったら、俺だって、拒めるんだけど。
 俺、酔っ払っちゃってるから。
 だから、これぐらい。酔ってるから。
 酒に流されて、これぐらいやっちゃったんだって。後で、言えるから。
 だから……。



「……――――――」
「ああ、いいね。綺麗なピンク色だ」
「……ッ……」
「この内壁が、いつもねっとりとパパのを締め付けてくるんだよね」
「……ば、ばかや……」
「どうしたの。おや、恥ずかしいのかな? これからもっと恥ずかしいことをするのに、困った子だ」
 羞恥でシンタローの目元が泳ぐ。彼は本当に、自分の指の感覚が、嫌でならなかった。
 しかも、その場所に、自分の最奥の場所に注ぎ込まれる視線。抗えない。
 マジックの、視線――
「もっと広げて」
「……」
「簡単だろう。指に力を入れて……お前のそこは、大きいものだって平気で飲み込めるんだから……だから、指くらい」
 シンタローは思う。なんて自分は、恥ずかしいことをしているのだろうと。
「広げないと、後で辛いのはお前だろう」
「あっ」



 マジックの視線を感じていたら、いつしかシンタローは、自分の指ではなく、彼の視線に犯されているような気持ちになってくるのだ。
 熱い息が零れる。青い目が。俺を見てる。
「だめだよ、もっと奥まで入れないと」
「……ッ」
 視線に促されるように、指が、自分の中にゆっくりと埋め込まれていく。
 やわらかく包まれる感触と、包む感触。双方が同時に感じられて、なんだか切なくなる。
 第二関節まで入ったところで、シンタローは黒い潤んだ目でマジックを見たが、許してはもらえない。
 根元まで、全部入れるしか……ないのだった。
「――……」
「奥まで入ったかな」
「――」
「答えて、シンタロー」
「……み、見れば、わかるだろっ!」
「私はお前に答えて欲しいんだよ。どんな心境かな? 自分で自分の、」
「言うなぁ! クッ、この変態がっ!」
 しかしシンタローに強いる行為にも関らず、これまた優雅にマジックは、にっこりと微笑んだ。
「余力あるなあ、シンちゃん。さ、それじゃ、しっかりほぐして貰おうかな」
「……ぐ」



 指を動かせ、というのだろうか。
 躊躇するシンタローに、マジックは言葉を重ねる。
「いつも私がやっているから、わかるだろう? 指をね、出し入れしてごらん。はは、でもお前はさっき、自分ではそんなことしないって言ったけど。もしかして慣れたものだったりして」
「……ッ、ンな訳あるか!」
「そーお? それじゃ、パパにその証拠見せてよ」
「ばっ、ばっかやろ、バカヤロー、馬鹿野郎!」
「ああ、元気、元気。よく吠えるなあ。はい、どうぞ」
「バカヤ……んっ」
 罵倒を続けようとして、シンタローは下半身に違和感を感じて、口を噤んだ。
 力みすぎて、指がジェルに滑り、半分だけ抜けそうになったのだ。
 図らずも『出し入れ』をしている状態になってしまったのである。
 マジックは、よしよし、とシンタローの頭を撫でてくる。
「そうそう、シンちゃん。今度はまた指の根元まで入れてごらん」
「……――」
 指の感覚が背後に。
 前の方、つまりシンタローの性器の方はといえば、後ろに含んでいる自分の指の奇妙な感覚に、頂点の状態から少ししおれて、それでも、ぴくぴく揺れている。
 マジックは、シンタローの頭を撫でた後、その性器の先を、ぴんと指で弾いた。
「あっ! ああああっ!」
 また、ぐいっとその熱い塊が、上を向く。早く放出したいと待ち兼ねている。
「ほら、シンちゃん。ちゃんと指で準備してくれないと。この子が可哀想だよ」
 この子、というのは、勿論、シンタローの性器のことなのである。
 可哀想だと思うのなら、指で弾いたりしなくてもいいのに、とシンタローは思い、同時に俺の方が可哀想なのだと感じたが、どちらも自分自身であるので、もう切羽詰った頭には、よくわからなくなってきてしまうのだ。
「さあ、指を動かして……擦ってごらん」
 そう甘く導かれると、もう頭を置き去りにして、体が動いてしまうのだ。






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